些細なことなのに不安を感じてしまう人がいます。
友だちと遊びに出かけるだけなのに胸がドキドキしたり、学校で授業中に発言するのが怖かったり、「不安にならなくてもいいのに」と頭で理解していても、心がいうことを聞かないことがあるでしょう。
実は、不安を感じやすい人には頭の中のイメージにちょっとした問題があります。
しかし、そのイメージを変えさえすれば、不安は減っていきます。
今回は、ペンシルバニア大学らの研究(1)から、不安のイメージの原因と対処法について見ていきましょう。
不安な人の頭の中のイメージ
不安を感じづらい人と感じやすい人の間には、はっきりとした違いがあります。それは、未来のことを想像する際に、「自分の目を通してイメージするか」それとも「自分から数歩引いてイメージするか」の違いです。
例えば、授業中に発言を強いられたとします。前者であれば、「何も答えられない自分の姿が浮かぶ」のに対し、後者は「答えられない自分の姿を遠くから眺めている」という感じです。
そしてペンシルバニア大学らの研究によると、「自分の目を通してイメージ」している人ほど不安を感じやすいと指摘しています。
つまり、未来の出来事との心理的な距離が近いほど不安を感じやすくなるのです。
ペンシルバニア大学らは、2344人を対象に実験を行いました。実験に参加した被験者らは、まずはじめに不安な出来事を想像するように指示されます。その後、不安のイメージの仕方を尋ねました。
- 自分の目を通して想像をしたか?
- 自分から数歩引いて観察者の目線で想像をしたか?
この2つの質問と、想像によって不安になったかを聞いたそうです。
すると、意外な結果が表れました。
自分の目を通して不安な出来事を想像した被験者は、不安を強く感じる傾向にあり、数歩引いて想像した被験者は不安を感じづらい傾向にあったのです。
研究者らがさらに両者の違いが何に起因するのか分析したところ、イメージの鮮明さにあることが分かりました。
その意味するところは、未来のことがはっきりイメージされるほど不安を感じやすくなるということ。
逆に言えば、不安を感じづらくするなら「未来のことを想像するときに数歩引いて鮮明さを減らせばよい」ということです。
数歩引いて想像で不安が減った
つづく同大学らのもう1つの実験では、意図的に「未来のことを数歩引いて想像」させることで、被験者らの不安を低下させることに成功しています。次いで見ていきましょう。
ペンシルバニア大学らの実験では、はじめの実験とは別の被験者らに不安な出来事を想像させました。被験者らは、次の2つのうちどちらかの方法で想像するように指示されます。
- 目を閉じ、実際に不安な出来事が起こっているように自分の目を通して想像する。
- 目を閉じ、数歩下がって不安な出来事を想像する。体験から距離を置いて想像する。
その際、もう1つの介入も行いました。被験者らに次の質問をしたそうです。
- 1の被験者らに対し、「なぜそれらに不安を感じるのですか?その理由や原因は何ですか?」と聞く
- 2の被験者らに対し、「なぜ彼はそれらに不安を感じるのですか?彼が感じている理由や原因は何ですか?」と聞く
2の方は、被験者らに「彼」と聞くことで、イメージを数歩引いて見ているという感覚を強化しています。
さて、最後に不安を感じたか尋ねた結果、2の被験者らは未来に対するイメージが鮮明でなくなって不安を感じづらかったと報告し、1の被験者はイメージが鮮明になって不安を感じやすかったと報告したそうです。
意図的に頭の中のイメージから数歩引くことで、不安は減るということです。
ペンシルバニア大学らの研究論文の著者は、次のように言います。
例えばこの研究では、ストレスの掛かることを想像する際に、非一人称(あなたや自分の名前)を使うことで、不安を減少できることを見つけた。
頭の中で自分のことを「彼とか、あなた」に変えることで、未来へのイメージから離れられ、不安が減るのかもしれません。
不安対策として、まずは、
- 未来のことが頭に浮かんだら、数歩引いて眺めてみる
- 主語をあなたまたは彼、彼女にする
これらをすることで、いつもよりも不安を感じづらくなるでしょう。また、数歩引くときにマインドフルネスを実践すると、イメージが掴みやすくて良いと思います。