これからお伝えするお話は不安の強みについてです。
誰もが不安に対してネガティブなイメージを持っていることでしょう。しかし、そんな不安にも確かにいいところもあります。今、悪いイメージを持っている方は、単に役立たせるための方法を知らないだけかもしれません。使い方さえ知ってしまえば、印象も変わるはずです。
それでは、海外で行われた研究とともに、不安の強みについてみていきましょう。
不安の強い医学生ほど医者としての能力が高くなった
ノッティンガム大学で行われた研究(1)では、不安が医学生の学習能力を高めることを明かしています。
分析の対象となったのは、医学部の学生220人。彼らの性格(ビッグファイブ)と5年間の成績データを取り、成績の高い人と弱い人の違いを分析したそうです。
ちなみに、海外の医学部では大学に5年間通うのですが、その内2年は学術的な内容を学んで、後の3年で実践的なことを学ぶんですね。なので後の3年間の勉強がもっとも医者としての必要なスキルということになります。
さて、分析の結果はというと、
- 誠実性が高いほど学術的な知識を習得しやすかった
- しかし実践的な知識は誠実性が高いほど低くなった
- 神経症傾向が低いほど実践的なスキルが身につかなかった
とのことです。
ということは、神経症傾向の低い人つまり不安に強い人ほど、医者としての能力が不足していていたことになります。
そして著者はこの結果について、
ストレスとより大きな不安がより高い臨床スキルの獲得と関係していた。この結果が明らかにしたのは、以前の学習能力の違いを考慮しても、不安レベルが高い人の方が不安を喚起するコースにおいて、より実力を発揮できるということだ。
と主張していて、不安が強い人の方が低い人よりも実力があると示唆しています。
確かに思い返すと、不安が強い時ほど入念に未来のシミュレーションをしたり、慎重に計画を練ったりした経験があるので、この主張は頷けます。
特に医者という職業の場合、ちょっとのミスが命に関わってしまうので、不安はむしろ強みに変わるというわけです。
不安を強みに変えるにはどうしたらいいの?
ノッティンガム大学の研究結果の通り、不安は実践的な状況の時ほど、力へと変わります。例えば、就職面接や人前でのスピーチなど。不安の強い人は本番前に、失敗しないためのシミュレーションを何度もやりますよね。このように、不安が強ければ反芻思考が始まり、本番に向けたシミュレーションを繰り返しするので、本番の時に実力を発揮できるのです。
もちろん、不安が強すぎて、何も手が付かないという精神状態になることもあるでしょう。そんな時は、セルフコンパッションや脱フュージョンテクニックを使い、落ち着きを取り戻してみてください。
不安を本番前のシミューレションの機会を与えてくれる「お助けツール」だと考えると、強みへと変えられるでしょう。