心理の棚

心理学の論文や書籍から得た知識をシェアしていきます。当ブログでは、心理学の知識が得られるでしょう。

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手書きとタイピング、どちらでメモを取ると記憶に残りやすいのか?

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本を読んだり人の話しを聞いたりするとき、気になった情報をメモする習慣がある人は多いです。

ノートに手書きで書きこむこともあれば、パソコンやスマホで文字を入力することもあるでしょう。

しかし、メモの内容を記憶するのにどちらの方法が相応しいのでしょうか?

手書きの方が記憶に残るという意見もあれば、反対の意見もあります。現在の答えは、どっちなのでしょうか?

 

 

手書きの方が優れているという過去の研究

2014年のMueller & Oppenheimerの研究では、手書きでメモを取ったほうがタイピングよりも記憶に残るといいます。

彼らは2つの実験を行い、そのことを証明しました。

実験に参加した被験者らは、5つのうち1つのビデオを見せられます。視聴中、紙に手書きまたはパソコンのタイピングでメモを取るように指示されたそうです。その30分後、内容の理解を測るテストが行われました。

テストは、事実に関する問いとコンセプトの理解に関する問いで構成されています。

テストが終わり、採点をするとメモの取り方で成績に差があることが分かりました。

手書きの方がコンセプトの理解が深まっていたのです。しかし、事実に関する問いは、両者で差はありませんでした。

 

なぜ、手書きの方が成績が上がったのかについて、2つの説明があります。

  1. パソコンでは注意に散漫になりやすいから
  2. タイピングは、聞いたままの言葉を1字1句写そうとしてしまい、理解が深まらないから

パソコンでメモを取るには、どうしても他のアプリやブラウザが気になって注意が散漫になってしまいます。すると、マルチタスクが促されるので、情報の理解が浅くなってしまうのです。

タイピングは、手書きと違って素早くメモを取ることができます。そのせいで、どの情報が大事なのかを意識しないまま書き写してしまいます。反対に、手書きは大事な部分を強調したり、難しい概念は自分の言葉で置き換えたりしてメモできるので内容の理解が深まるのです。

 

一見、納得しそうな説明ではありますが、この研究結果を支持していない論文も発表されています。

論文では、むしろタイピングの方が授業への理解が深まったという報告がされているのです。

また研究者の中には、Mueller & Oppenheimerの実験の再現が行われていないことから、まだ手書きの方が優秀だと結論付けられないのでは、と意見する人もいます。

そんな中、Mueller & Oppenheimerの実験結果を疑う論文が新たに出ました。

 

再現を試みた新しい研究が発表された

手書きの方が優れているという研究結果が過大評価なのではないか、とする論文が2019年にEducational Psychology Reviewに掲載されました。

この論文では、Mueller & Oppenheimerの実験の再現を試みた結果が書かれています。実験の方法は、Mueller & Oppenheimerと限りなく近い方法です。

今回も彼らと同様、2つの実験を行っています。

1つ目は、Mueller & Oppenheimerと同じビデオを視聴し、同じテストを被験者に受けさせました。

ただし、2つ違う点があります。

  1. 30分後のテストに加え、2日後のテストも行った
  2. 手書き、タイピングだけでなく、eWriterのグループを追加した

eWriterというのは、電子ノートのことです。

この方法で、実験を行ったところ、意外な結果が表れました。

確かに30分後のテストと2日後のテストともに手書きの方がテストの成績は良かったものの、コンセンプトに関する問いの成績は3グループに差が無かったのです。事実に関する問いは、手書きの方が優れていました

 

さらにもう1つの実験でも、意外な結果が表れています。

今度はビデオを視聴中にノートを取らないグループを追加しての実験です。

結果は、事実に関する問いでは手書きが優れていたものの、統計的に有意では無かったということ。そしてコンセプトの理解は、タイピングの方が統計的に有意でないものの優れていたのです。

結果はこれだけではありません。ビデオの復習をした後にテストを行ったところ、手書きもタイピングもeWriterも成績に差がなくなったのです

もしかすると、手書きは復習を行わないときにしか、記憶にとって有利に働かないのかもしれません。

 

今回の研究ではMueller & Oppenheimerと今回の実験の4つでメタ分析を行っています。その結果、手書きは事実に関する問いとコンセプトの理解に関する問いの両方で、無視できるくらいの小さな効果しか得られないことが分かりました

今回の結果から、研究者は、どの方法がメモを取るのに優れているかは結論付けられないと主張しています。

手書きかタイピング、どちらが優れているのかの決着は未だ付かずということでした。

 

好きなほうを選ぼう

研究ではタイピングでも手書きでも内容の理解や記憶に影響はほとんど無い、ということなので、お好きな方法でメモを取るのが一番だと思います。

私は手書きでメモを取る方が好きで、注意が散漫にならないという点で優れていると思っています。スマホやパソコンだと、どうしてもアプリを開きたくなっちゃうので。

字を書くのが面倒だ、ストレスだ、アプリなんて気にならないという方は、タイピングの方が使いやすいかも。

なんにしても、復習が大事なので、メモの取り方は気にすることではないかなと思います。