心理の棚

心理学の論文や書籍から得た知識をシェアしていきます。当ブログでは、心理学の知識が得られるでしょう。

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【悲報】あの有名な心理学実験「温かい飲み物で...」が再現に失敗してた

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心理学の有名な話で、「温かい飲み物を持つと、相手のことを温かい人間だと感じる」というのがあります。物理的に温かさを感じると、目の前の人のことも優しい、穏やか、のように温かい人間だと感じてしまうのだそうです。

この話を聞いた人の中には、「温かいコーヒーをプレゼントすれば、自分の好感度が上がるかも」と興奮した方もいるでしょう。

しかし、今回紹介する研究でその興奮も冷めてしまいます。新しい研究では、元ネタとなった実験の再現に失敗したのです。

まずは、元ネタのオリジナルの研究についてお伝えします。それから新しい研究(1)について見ていきましょう。

 

 

温かい飲み物やパッドの効果

2019年1月現在、元ネタとなった論文(2)は引用数が1000を超えるほどの人気論文となっています。まずはその論文に載っている、2つの実験について見ていきましょう。

実験1.ホットコーヒーで人を見る目が変わった

エール大学の研究者は、41人の大学生を対象にコーヒーを使った実験を行いました。被験者らは1人ずつアシスタントと一緒にエレベーターに乗り、研究室へ向かいます。そのエレベーターの中で、書類で手がふさがっているアシスタントから「コーヒーカップを持ってくれないか」と頼まれました。被験者らはこの時、ホットコーヒまたはアイスコーヒーのどちらかを手渡されます

研究室に着くと、Aという人物の資料を読んでAがどんな性格か10の項目を評価しました。例えば、項目には、「やさしい、穏やか、利己的、怒りやすい」というのが含まれていたそうです。

すると、エレベーターでもたされたコーヒーカップが温かいか冷たいかでAに対する評価が変わりました。

温かいコーヒーではAのことを「やさしい、穏やか」と、冷たいコーヒーでは「やさしくない、利己的」と評価したのです。

この実験から、物理的な温かさが人物評価に影響を与えることが示されました。

 

実験2.温かいパッドで利他的に

続いてエール大学の研究者は、2つ目の実験を行っています。

実験では、マーケティングの調査と称し、被験者らに温かいパックまたは冷たいパックを渡して癒し効果の程度を尋ねたそうです。

その後、調査の報酬として、2つの選択肢を与えました。

  1. 自分用のドリンクまたはアイスクリーム券
  2. 友達用のドリンクまたはアイスクリーム券

こちらの実験でも、温かいパックと冷たいパックで選択に差が出たそうです。

温かいパックを渡された被験者らは、約54%が友達用を選び、冷たいパックでは約75%が自分用を選びました。

2つの実験から、物理的な温かさは人を温かいと感じさせるだけでなく、利他的にもさせることが分かったのです。

 

しかし2018年の12月再現に失敗

元ネタの論文が発表されたのは、2008年のことです。それから10年もの間支持されてきたものの、今回の新しい研究では再現に失敗しました。

新しい研究では、オリジナルよりも被験者の数を3倍以上に増やし、さらに現実に近い形で実験を行っています。オリジナルはラボベースの実験で、学生を対象としたものでしたが、今回は学生以外も対象としたフィールドベースでの実験です。実験の信頼度が格段に上がっています。

さて、実験の結果、物理的な温かさに人物評価にも利他的な選択にも全く効果がないことが分かったそうです。

2つの実験結果をまとめたのがこちら。

  • オリジナル論文での報告が、r = 0.28 - 31だったのに対し、追試では r = -0.03 - 02

オリジナル論文では、少しは効果があったものの、追試では少しも効果がなかったのです。

今回の追試実験は、オリジナルを完全再現したわけではないのですが、それ以上に厳密な方法で実験をしています。オリジナルが不利な状況となりました。

温かいコーヒーで好感度を上げる作戦は通用しないのかもしれません。

 

まとめ

赤を身につけてもモテない、に続いて今回も心理学の有名な話が否定されてしまいました。

似たような実験で過去に再現に失敗したのを挙げてみると、「老人に関する単語に触れるとゆっくり歩くようになるプライミング効果」、「お金のことを考えると利己的になる」などもあります。

心理学の研究は再現性が高くないので、常に最新の情報を手に入れておきたいところですね。「心理の棚」では、なるべく新しい情報をお伝えできたらなと思います。