心理の棚

心理学の論文や書籍から得た知識をシェアしていきます。当ブログでは、心理学の知識が得られるでしょう。

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マルチビタミンに効果がないことを人に信じてもらう方法

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何種類ものビタミンが含まれている「マルチビタミン」。

ビタミン不足の解消や健康効果が期待されますが、健康的な人がマルチビタミンを摂取しても偽薬以上の効果はありません。中身が砂糖のカプセルを飲んでいるようなものなのです。研究によっては、むしろ害になることも指摘されています。

これらの情報は、検索すればネット上ですぐに見つかるもの。にもかかわらず、その事実を軽視し、摂取し始めてしまう人が少なくないのです。

正しい情報を伝える以外にどう説得すれば、このような誤った行動を事前に防ぐことが出来るのでしょうか?

西オーストラリア大学の研究では、その解決策のヒントを与えてくれています。

論文は、"Psychology & Health" に掲載されました。

 

 

因果関係の錯覚を防ぐこと

なぜ、効果がないにも関わらず、マルチビタミンを摂取する人がいるのでしょうか?

西オーストラリア大学の研究によると、科学者がいうところの「因果関係の錯覚」が関係しているそうです。これは原因と結果を取り違えている事を意味します。

 

例えば、マルチビタミンを飲んで美肌になったとしましょう。この場合、「マルチビタミンに美肌効果あり」と結論づけたくなりませんか?しかし、これは因果関係の錯覚で、誤りです。

もしかすると、美肌になった原因は野菜を普段より食べていたからかもしれません。運動を始めたからかもしれません。

他の要因を考えずに、誤った原因「マルチビタミンの摂取」と結果「美肌になった」を結び付けてしまうのが因果関係の錯覚なのです。

 

この罠にハマると、本当はマルチビタミンに美肌効果がなかったとしても、肌に良いと思い込んでしまいます。

晴れて、マルチビタミンを飲み続ける人の出来上がりというわけです。

 

この問題は非常に厄介なもので、因果関係の錯覚に陥ると、間違った情報を信じ込んでしまうだけでなく、正しい情報に触れても説得されづらくなってしまいます。

が、打つ手はあります。

西オーストラリア大学の研究者らは、因果関係の錯覚の予防策を研究しました。その結果、唯一の方法が見つかったのです。

 

この伝え方でマルチビタミンを信じなくなった

研究の対象となったのは、245人の大学生ら。彼らをランダムに6つのグループに分けて、実験を行いました(RCT)。

  1. マルチビタミンのメリットではない無関係の情報を伝えられたグループ(コントロール群)
  2. マルチビタミンのメリットのみを伝えられたグループ(「4人中3人に」健康効果があったという情報のみ)
  3. マルチビタミンのメリットのみを伝えられたグループ。ただし、2と違って不十分な情報が提示された(「多くの人に」効果があったという情報のみ)
  4. マルチビタミンは偽薬と同程度の効果しかないと伝えられたグループ(4人中3人が砂糖薬と同程度の効果しかえられなかったという情報)
  5. 4の情報に加えて、科学的な説明(なぜマルチビタミンに効果がないのか?)を伝えたグループ
  6. マルチビタミンが偽薬以上の効果があったと伝えられたグループ(4人中3人が砂糖薬よりも効果があったという情報)

これらの情報に触れた後、参加者らに5ドルを渡して、そのお金の中からマルチビタミンに払ってもいい金額を尋ねました。

すると、コントロール群と比べてマルチビタミンへの購買意欲が低かったグループは、1つだけだったそうです。

そのグループとは、5の「マルチビタミンが偽薬と同程度の効果しかないという情報と、科学的な説明をセットに伝えられたグループ」でした。

 

今回の結果から、因果関係の錯誤を防ぐ唯一の方法が見つかりました。「何人中何人に効果があった」というシンプルな情報に、科学的な根拠を加えて人に話すこと。

つまり、わかりやすい比較データと根拠を同時に提示することで、因果関係の錯覚を防げるのです。

 

もちろん、絶対に効果があるというわけではありません。他の説得術と組み合わせて使うことで、さらなる効果が期待されます。

こちらの本や、定番ですが影響力の武器を読むと、説得力を手にすることができるでしょう。