「顔は思い出せるんだけど、名前がちょっと...」と思い悩んだことはないですか?
久しぶりにクラスメートに会っても名前が思い出せない。取引先の人の名前を忘れてしまった。
その様な経験から、多くの人が名前よりも顔の方が覚えやすいと信じていることでしょう。
しかし、新しい研究では、それが勘違いであることが判明しました。
顔よりも名前のほうが覚えやすいという研究結果
名前のほうが顔よりも覚えやすいです。
ヨーク大学の研究(1)では、74人の被験者を対象に3つの実験を行いました。
まずは、馴染みのない人の顔と名前、どちらが覚えやすいのか。
どんな実験だったかというと、
- 40個の中から1個ずつ顔写真と名前のセットを見せ、被験者が記憶したら次を見せる
- 40人分見せ終わったら、思い出せるかテスト
- テストでは、80人分の顔と名前のセット(別の角度から取った写真やフォントを変えた名前を混ぜている)を見せて、最初にみたのと同じ人物かどうか答える
例えば、Kellenさんの顔写真と名前を最初に覚えます。次にMikeさん、Danielさん...と、他の人のも順番に覚えていって、40枚が終わったらテストです。テストでは、最初に見たKellenさんの鏡写しになった写真または、同じ角度の写真、全然違う人の写真を見せられます。違う角度とは、髪が右に分かれてたのが、左に分かれているといった感じですね。もし、見せられたのが最初に見た人物Kellenさんだったら「見たことがある」と答えれば正解というわけです。
そして、結果は、
- 見せられたのが最初にみた人と同じ顔だった場合の正答率は76%。別の角度だった場合では、64%だった
- 同じフォントの名前だった場合の正答率は85%。別のフォントでは、83%だった
ということで、名前の圧勝になりました。顔のほうが覚えやすいどころか、10%も差が付いています。偶然の結果だとはいえませんよね。
続いて、2つ目の実験では、顔と名前を別々に覚えさせた後にテストを行っています。その結果も名前のほうが覚えやすかったそうです。
- 同じ顔の正答率76%、角度の違う顔67%
- 同じ名前の正答率89%、フォントの違う名前86%
えー、でも実際顔の方が覚えやすいよ、と納得しない人もいるでしょう。
では、初対面の人と会った後に、記憶のみを頼りにして似顔絵を描いてみてください。きっと、描きづらいはずです。しかし、名前であればどうでしょうか?~さんと会ったと思い出せるのではないでしょうか。
人の顔というのは、会った時に「見覚えがある」と思うだけで、会う前から「完璧に顔の細部まで覚えている」ということはまず少ないのです。見覚えがあるか記憶しているか、という違いがあるわけです。
論文の著者は、こんなことも主張しています。
顔を見分けるよりも名前を見分ける方にアドバンテージがあるというのは、その他の研究でも一致している。名前は、視覚と聴覚で表現されるのに対して、顔は視覚の情報のみしかない。
人間は、感覚を多く使うほど記憶しやすいといわれています。名前は2つの感覚を使って覚えられるため、顔よりも覚えやすいということです。
ちなみに、実験3は有名人の顔と名前で実験をした結果、どちらも覚えやすさに差がなかったそうです。
まとめ
「わたし、顔はすぐに覚えれるんだけど、名前が覚えられないんだよね」というのは、心理学的には間違っています。
逆に、「名前はすぐ覚えれるけど、顔は覚えられない」というのが正しいのです。
もし、間違えて言っている人がいたら、突っ込んでみるといいかもしれません。