心理の棚

心理学の論文や書籍から得た知識をシェアしていきます。当ブログでは、心理学の知識を学べるでしょう。

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どうやったら場面緘黙症は治るのか?最新研究と共に紹介

selective mutism

「私は人見知りだ」という人は少なくないのですが、「私は他人と一言も話せない」という人は滅多にいません。有病率1%の珍しい症状である、「場面緘黙症」は特定の場所では一切喋れないという深刻な悩みを抱えます。ちなみに私も幼いころ、同様の症状を抱えてもいました。

ただの人見知りな人であれば、学校や職場などの家以外の場所で、仲のいい人と話すことはできるでしょう。が、場面緘黙症の人は違います。家から一歩外に出ただけで、友人のみならず、家族との会話までできなくなってしまうのです。

場面緘黙症は時が経てば治るという簡単な症状ではありません。正しい知識と、認知の歪みを治す必要があります。

今回は、私の経験と海外の最新の研究を元に、場面緘黙症がどうやったら治るのかについてお伝えします。

 

 

私も体験した場面緘黙の症状と治るまで

約100人に1人が患うという場面緘黙症ですが、その症状を私も3歳頃から自覚しています。

「子供は風の子」と言われるとおり、子供には元気に外で遊びまわるイメージがあります。しかし私は違いました。家から外へ出れば、すんと大人しくなって、誰とも話すことが出来ません。ましてや、外で元気に走り回るなんてことは出来ませんでした。

 

一番つらかった幼稚園の頃の私

この頃の私は、人生の中で一番重い症状を自覚しています

幼稚園では、常に独り。他の子や先生に話しかけられても発話しません。声を出そうとしても、口から言葉が出てこないのです。ただ、意思だけは伝える必要があるので、頷くか首を振って質問に答えます。「トイレ行きたいの?」と聞かれれば、黙って首を縦に振る、といった感じです。そんな私の態度が気に入らなかった先生は、何度か私の口元をつまんで「あなたには口があるでしょうが」と怒られたこともあります。

大人しすぎるゆえ、嫌なことをされたこともありました。なぜかじっと睨まれたり、一人だけ遊びの輪に入れてもらえなかったり...。そんな日々を送っていたのです。

 

変わるきっかけをくれた小学校1年生

私の場面緘黙が大きく改善したのは、小学校1年生になってからのこと。

相変わらず、頷くか首を振るだけしか出来なかった私に、初めて友達が出来たことがきっかけでした。

いつもの帰り道。一緒に下校している班の子2人がポケモンのゲームについて話していました。「お兄ちゃんが、モンスターボールでグラードン捕まえたって」男の子に向かって自慢げに話す彼女は、すぐ近くに住む同じクラスの女の子。「俺だって捕まえられるし」女の子の兄に対抗心を燃やす彼は、もう少し遠いところに住む同じくクラスの男の子でした。「え、皆ポケモンやってるの?」と私は突然話しかけます。

当時の私は、ポケモン大好きっ子。一日中ゲーム機を握り締め、目を輝かして遊んでいました。だからこそ、この話に興味を持ち、この時初めて話しかけてみたいと思ったのです。

それからというもの、帰り道にはポケモンの話しをするようになり、やがて2人と家で遊ぶようになります。

変わるきっかけをくれたもの、それはポケモンのゲームと友人だったのです。

 

大学生に至るまでで、良い友人に恵まれる

小学校1年の時のきっかけから、徐々に友人は増えていき、次第に症状は和らいでいきます。が、中学生のときまでは、近くに知らない人がいると誰とも話せないという症状は続きました

更に大きく改善したのは、高校生の時です。優しいクラスメートと生涯の付き合いになるであろう友人との巡り合いがきっかけとなりました。

女の子も男の子も誰もが気軽に話しかけてくれ、どんな子も私のいい所を見つけてくれる、そんな人間関係を築けたのです。

学校にちゃんと自分の居場所がある。そう思えたことで、私の場面緘黙は和らいでいきました

完璧に症状が治ったわけではありませんが、人に自分から話しかけに行ったり、場所を気にせずに話せるようになったりと改善しています。

大学でも、いつでも助けてくれる良い友人を持て、日常が楽しくなっています。

 

私の経験から学べること

場面緘黙を治すには、人と安心して話せる環境というのが重要です。自由に自分の意思を伝えられる環境を作る、これこそが最善の療法かと思います。

が、そもそも簡単に環境を作れていたら、場面緘黙に悩んではいないでしょう。私が友人を作れたのは、ゲームが好きだったから。好きなことがきっかけで友人ができたのです。

自分の趣味や好きなことで、人と関わりを持とうとする。少なくとも、この行動をしていけば、何の共通点もない人と話そうとするよりかは話しかけやすくなるはずです。少しずつ、話すきっかけを作り徐々に話す頻度を上げていく。ちょっとずつステップアップする方法が、場面緘黙を治すのにいいかと思います

 

30人中21人の場面緘黙が完全に治ったという最新の研究

場面緘黙の症例数は少なく、今まであまり研究が行われてきませんでした。そもそも場面緘黙の人たちは、単なる大人しい人だと勘違いされることが多く、自分が症状を患っているということすら気づけないからです。そのせいで、研究のサンプル数が足りていませんでした。

そんなところ時が過ぎると共に、少しずつ症例数が増えていき、2018年に出た論文(1)では、RCT(信頼性の高い実験)を使った追跡調査で、約7割の人が改善したという行動療法について明かしています

一体どんな方法なのでしょうか?

 

実験で行った認知行動療法とは?

実験では、認知行動療法を使って場面緘黙症を改善しています。これから、実際に行われた療法についてみていきましょう。

まず最初の段階として、行動療法を施す側と受ける側の信頼関係を築いていきます。場面緘黙を治すには、2人の信頼関係がなによりも重要だからです。

信頼関係は次のように作っていったとのこと。

  1. 学校前、学校、家の安心できる場所で計3回のセッションを行う
  2. 子供の横に座り、子供が楽しめる活動を使って感情の共有を図る
  3. 子供に質問をし(楽しい?など)、考えを口にだすまでゆっくりと待つ

子供との信頼が出来たら、次は徐々に話す機会を増やしていくようです。子供の会話レベルを6段階に分け、1段ずつこなしていきます。具体的に何をするのかと言うと、

  1. 第1段階、親と一緒に居る状態で、セラピストと話す
  2. 第2段階、親のいない部屋でセラピストと話す
  3. 第3段階、セラピストが一緒にいる状態で、学校の先生と話す
  4. 第4段階、セラピストのいない部屋で先生と話す
  5. 第5段階、複数の先生がいる状況で話す
  6. 第6段階、セラピストのいない状況で、他の子供がいるところで先生と話す

の6段階で、2週間に1回、学校前、学校、家の安心できる場所で計3回のセッションを行います。安心して話せる環境を少しずつ作っていくという方法です。

各セッションでは信頼関係を作ることを目的とし、無理に話させないように注意をします。

実験では平均で21週間に渡って、30-32人の子供にこれらのセッションを行ったそうです。次に、実験の結果を見ていきましょう。

実験の結果

全てのセッションを終えてから、5年間の追跡調査を行ったところ、70%の子供たちが完全に治ったとの結果がでました。

他にも実験で分かったことがあり、

  • 17%の子供たちが家以外の特定の場所では話せるようになった(学校では話せるけど、食事の場では話せないなど)
  • 13%の子供たちは症状が残った
  • 年齢の低い子の方が、高い子よりも大きな改善が見られた(3-5歳で88%、6-9歳で50%)
  • 全体的に場面緘黙だった子たちの人生の幸福度は、緘黙でない子と変わらなかった(緘黙の子は22.75点、そうでない子は22.59点)
  • 今でも話すことに抵抗を感じるという子たちは50%いた

といった感じに。約87%の子が、完全に治った又は一部治ったという結果になりました。認知行動療法では、大きな改善が見込めるということになります。ちなみに、何も治療をしなかった子たちも5年間追跡調査をしたそうなのですが、症状は変わらなかったみたいです。時間が症状を解決するということには、期待できません。

 

実生活でこの研究を活かすには

実験で行われたのは、少しずつ刺激にならしていくという方法でした。ちなみに、この方法のことを心理学ではエクスポージャー(暴露療法)といいます。

エクスポージャーを実生活で行っていけば、場面緘目は改善していくでしょう。実際にやる方法としては、

  1. 紙に自分の今の恐怖レベルを1~100で書く
  2. コンビニの店員さんや、スーパーのお店の人にあいさつをしてみる(第1段階)
  3. 自分の行動を振り返り、その時の恐怖レベルと今の恐怖レベルを1~100で紙に書く
  4. 繰り返し第1段階を行い、恐怖レベルが下がるまで続ける
  5. 下がったら、もう少し強い刺激(店員さんと2言話してみるなど)で挑戦してみる

のような感じで、自分で課題を設定し、恐怖レベルを数値化することで成果を確認しながら行うと良いです。

繰り返し続けること、場数を踏むことで不安や恐怖が減り、徐々に話すことへの抵抗感が減っていくかと思います。少しずつ試してみてください。

 

まとめ

場面緘黙症が治ったという人の中にも、未だに話すことに抵抗があるという人もいます。海外の実験では、緘黙に対するセラピーを受けてから5年経っても、5割の人が抵抗を感じると答えたそうです。

私も未だに他人と話すことには抵抗を感じます。ですが、そのせいで人生が悪くなるとは思いません大事なのは、自分にとって価値のあることを見つけることだと思います。本当に大切だと思えるものが見つかれば、悩みなど減っていくはずです。私にとって価値あることは、心理学の情報を提供することでした。悩みを抱えた人が一歩踏み出せるような情報を伝えたい、それが私の価値観です。

もう価値感を見つけている人はそれに専心し、そうでない人は、見つけることから始めてみてはいかがですか?きっと、人生に深みをもたらしてくれることでしょう。